電留線

長いものを置く場所です

補遺:柊かえとボイスノイド、そしてSasakure.UK

はじめに

先日、こんな記事を書きました。

この記事を思い返していたところ、柊かえへの思索が甘かったなということに気づいたので追加でこちらを用意しました。『ガジェットはプリンセス』の話もしたかったので良い機会ですし纏めてやります。よろしくお願いします。

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念押しという形になりますが、前述の記事を読むことを強くお勧めします。

 

 

柊かえのボイスノイドへの眼差し

皆さまご存知のことだとは思いますが、柊かえはアイドルが大好きです。その対象としてボイスノイドも入っているらしく、ボイスノイドを知らなかった舞菜に説明したときにはつい早口になってしまい

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と誤魔化したことがあります。

さて、かえの特徴のひとつとして日常会話にてネットスラングを多用することがありますよね。実はこの発言は、我々の世界にて初音ミク黎明期になされたとある書き込みが元ネタになっています。あちらの世界でもボイスノイド黎明期に同じようなことがあったのでしょうか?

723 名前:名無しさん@八周年sage] 投稿日:2007/10/18(木) 13:52:33 id:ydA2Ce+H0
>>623

何か胸が熱くなるな
新しい技術の夜明けを見ているようだ*1

この状況でこのスラングをスッと出せることからも、かえのボイスノイドへ真剣な姿勢がわかりますよね。ちなみにアニメでも同じようなことをこのシーンで言っていました。

 

これは少し脱線になりますが、ナユタン星人さんが初音ミク10周年記念で作成した曲『リバースユニバース』ではこのスラングが非常に効果的なかたちで引用されています。是非聴いてください。フルの動画もあるので。

リバースユニバース

リバースユニバース

  • ナユタン星人
  • ロック
  • ¥250

 

さて話を戻します。このようなかえが『ミライkeyノート』をどう聴いていたかとなると、やはり作者の込めたメッセージや作者の背景を重視してということになってしまうのではないでしょうか。私はボカロだけで生身のアイドルには詳しくないのですが、どうしてもそうなってしまうと思うんですよね。めんどくさいオタクの性なので。

 

少し私的な話になるのですが、めんどくさいオタクの例としてふたつの曲に触れます。

まずは『ODDS&ENDS』です。

ODDS & ENDS(feat.初音ミク)

ODDS & ENDS(feat.初音ミク)

この曲はsupercellのryoさんが創ったもので、2012年に公表されました。ryoさんといえば『メルト』がヒットしたのち作詞作曲家として快進撃を続けていましたが、『君の知らない物語』以降人間の歌い手による曲ばかりでVOCALOID曲の発表は疎らになっていました。そんなときに出てきたのがこの曲だったのです。

ODDS&ENDS。
がらくた。半端もの。
これはミクと、そして僕の話。

supercell Member blog - ODDS&ENDSより

この引用元のエントリにもあるように全体的に私小説風に仕上げられており、VOCALOIDから離れ気味だった彼の経歴を知っているとどうしてもそういうことがあったかもしれないなと思えてしまうんですよね。

 

続けて、こちらは今でも消化しきれていないところもあるのですが、『終点』です。

終点 feat.初音ミク

終点 feat.初音ミク

  • cosMo@暴走P
  • アニメ
  • ¥255

こちらはcosMo@暴走Pによるもので、2013年に公開されました。暴走Pといえばなんといっても『初音ミクの消失(LONG VERSION)』ですが、一方で有名になりすぎたものはどこか人を縛ってくるようになるんですよね。

そしてボカロカルチャーも変容していく中で産み出されたのがこの曲で、初見では言いようのない強い衝撃を受けた記憶があります。また実際に氏によるミク曲はしばらく発表がなくなり、2016年の『#誰かこの痛みに名前をつけてください』まで開くこととなります。

#誰かこの痛みに名前をつけてください

#誰かこの痛みに名前をつけてください

  • cosMo@暴走P
  • アニメ
  • ¥255

 

かえもきっとこんな風に既に『ミライkeyノート』からなんらかのメッセージを受け取っていたので、かえのココロを動かしたのはあくまで舞菜と紗由がカバーし自分たちの想いを入れ込んだ『ミライkeyノート』でなければならなかったんですよね。かえの受け取っていたものを超えてふたりの想いをかえに届かせ、謡舞踊部に入ってもらうための一押しとしては。



Sasakure.UKによる『ガジェットはプリンセス』

さて続けては『ガジェットはプリンセス』について、作詞作曲編曲者という面を中心にした話を。

ガジェットはプリンセス

ガジェットはプリンセス

アニメ化に際して創られた柊かえ初のソロ曲ということになりますが、Re:ステージ!というコンテンツの中でのこの曲の位置付けについてはアニメからリメンバーズになった私より質感を持って書ける方がいらっしゃると思うのでお任せします。

 

この曲を創られたのはSasakure.UKさんです。もともとBMSという音ゲーで活躍されていた方で、VOCALOIDでも2007年末*2と比較的初期から活動をされています。代表曲としては『*ハロー、プラネット。』があり、このようにチップチューン的なサウンドや転調に変拍子といった打ち込み曲であることをフル活用していることが特徴……だと思います。

現在では多様な活動をされていてその中には楽曲提供というものもあり、今回はその一環でということになるのでしょうか。

 

さて『ガジェットはプリンセス』という曲自体の話へと移っていきます。

ライブコンテンツの面もあるリステでありながら、Sasakure.UKさんの持ち味を前面に押し出した打ち込み曲らしい曲調なのはやはりかなり特徴的ですよね*3。3rdライブの昼の部には行けなかったのですが、音源での披露がなされたと聞いた時には少し安心したりもしました。あとはワンマンでフルやるときにどうなるかてすね。

でも、やっぱり柊かえを表現するのにはこれしかないと思えませんか?彼女はIPPグラスをはじめに電子ガジェットを駆ることが持ち味で、"ダークシャドウプリンセス"の称号を得たのもゲームの中で。だからこうしたサイバーでゲーム的なサウンドを作れる方を引っ張ってこれたリステ運営には感謝しかないですよね、たとえライブで披露しにくいというリスクを背負ってまでも。そして私も正直なところここまでささくれサウンドに適合できる人間のキャラクターが存在するなんて思ってなかったのでかなり刺されています。

そしてここぱんなの声を務めた香澄の曲は普通に人間向けの曲を書かれる方に任せた一方で、その相方であるかえの曲にはボカロPとして名を上げた人を充てるというのも意味を感じてしまいますよね。あくまで香澄とここぱんなは決別した別のもの、一方でかえとガジェットは切り離せないものということの表現でしょうか?どこか『リメンバーズ!』を思い出しますね。香澄の好きなものは既にサバゲになっているけど、かえの好きなものは最初から電子ガジェットで。

リメンバーズ!

リメンバーズ!

  • KiRaRe
  • アニメ
  • ¥255

この件といい胸熱の件といい、リステ運営のVOCALOIDをアイドルコンテンツでやっていくスタンスには私の中では信頼が積み上がってます。前回書いた『ミライkeyノート』の件もそのひとつですね。

 

え、みぃ先輩の曲もやしきんさんじゃないかって?それはそれ、これはこれです。

 

 

おわりに

ある程度は分かりやすい記事にしようと努力してみましたが果たして伝わったでしょうか。特に自分語りパートは脱線でありつつ本筋と繋げようとしてはいるのですが上手くいってますかね……。知ってることを伝えていくのは案外難しいというのを再認識しました。

数奇な運命が絡み合ってアニメから知るようになったこのRe:ステージ!というコンテンツですが、凄く好きになってしまったのでこのまま走っていこうと思います。今度こそその辺りの話をついにしようと思います。

 

記事内のスクリーンショットについての権利は各権利者様に帰属します。

*1:ニュース速報+板のスレッド | itest.5ch.netより

*2:【初音ミクオリジナル曲】PICO@LUV (☆彡とvとAIのウタ。)【手描きPV付き】 - ニコニコ動画

*3:まぁオルタンシアのボカロP提供曲の中にも作者の色が強めに出てるものはありますが……