電留線

長いものを置く場所です

ボカロ聴きの立場から語る『ミライkeyノート』のReflectionと、香澄が歌った意味

 

PRISM☆LIVE!3rd STAGE~Reflection~、最高でしたね。私は当日券が出たので夜の部だけ辛うじて参戦できたのですが、半ば無理を押してでも行った甲斐があったと思っています。

さてライブ自体の感想は諸事情あって"今は"投稿できないので、代わりにひとつの曲についての話を。

私が参加できた夜の部にて披露された『ミライkeyノート』は、岩橋由佳さんが恐らく本城香澄として歌ったものでした。そのことについて、あのアニメの世界におけるボイスノイドに似たものであるこの世界のVOCALOIDの楽曲たちに"胸を熱く"させられた者のひとりとして言語化してみたいので試みます。何かが伝われば嬉しいです。

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一応付け加えると、この章のタイトルは夜の部ラストの牧野天音さんのお言葉より頂いてます。

 

 

VOCALOIDが"歌う"意味

さて、まずは少しボカロ曲というものについて掘り下げてみようかと思います。

あえて厳しく断言してしまうならば、VOCALOIDDTMにおいて用いることのできる楽器の1つです。そこに人間の歌手のような歌い手の意思は介在しないこととなり、作者の意思で曲の全てを支配することが容易になったというのが意義の1つとしてあると考えています。今までそれはインスト曲に限られていましたが、ボーカル曲という形でより広い人々に届けやすくなりました。

確かに初期の有名曲を中心に、VOCALOID自体を扱ったいわゆるキャラソン的な曲は散見されます。しかしそれらもあくまでそのPがうちの娘のために用意したもので、そのVOCALOID総体に適用はできるとは限らないのです。

 

少し離れたところから、これについての例示をしましょうか。

Caligula -カリギュラ-』というゲームがありまして、この作品ではモチーフの1つにVOCALOID的なものを入れ込んでいます。それ故に主人公たちが敵として対峙することになる"オスティナートの楽士"たちには様々なボカロPが書き下ろしたテーマ曲があるのですが、そのどれもがそれぞれの楽士の個人的な理想とトラウマを詰め込んだものとなっているのです。

そういうものもありうるという認識が聴き手の側に既に醸成されているからこそ、こういう仕掛けをすることができたのだと私は考えています。

またもう一つ別の例を、ボカロ曲って物語音楽が結構あるんですよね。

古くは悪ノ娘や少女の空想庭園に森ノ宮先生なんかもありますが、やはりカゲロウプロジェクトからの大爆発期は無視できないです。

もちろん人間の歌手を使った物語音楽は以前からありましたが、作詞作曲者からの曲全体の統制のしやすさという面からボカロ曲の形でより広まったのではないか、というのが私の見解です。

 

アニメを観る我々からの『ミライkeyノート』

さて現実のボカロ曲の要素について少しお話ししたのですが、Re:ステージ!ドリームデイズという作品の中のミライkeyノートという曲の場合少し事情が変わってきます。なぜならば第四の壁の向こう側にいる私達は、この曲について登場人物たちを通してしか知ることができないからです。それ故に、私たちは本来なら重要なはずの作詞作曲者の情報を得ることができません。

しかし、この状況においてはむしろそれがプラスに働きます。何故ならこの曲に触れたKiRaReのメンバーは、いずれもボイスノイドを専門に聴いているわけではないからです。いわばほかのアイドル曲と同列に聴いている状況で、曲自体よりも彼女たちがそれを介して何をしてどういう感情の動きをしたかの方に重点が置かれています。だから、余分な情報として捨象されたとも言えるでしょう。

まぁ要は前章にて述べたような御託を並べてボカロ曲に向かうのはその分野のオタクだけってことです。私たちの生きる世界でも、ボカロに限らずヒット曲って大抵そう聴かれてしまうものじゃないですか?

 

ではミライkeyノートがボイスノイド曲であることの意味はないのかというと、そうでもありません。前述の通りボイスノイドは人の意思から離れたところにあるので、KiRaReのメンバーそれぞれの心の動きを極力邪魔せずに反映できるんですよね。それこそ3ライブのタイトルであるReflectionですよ。

だから紗由はミライkeyノートに共感しておどったし、舞菜もそれに続き、部長も紆余曲折を経ましたがターンを決めることができた。

かえが心を動かされたのも、"舞菜と紗由が歌う"ミライkeyノートを聴いたからでした。ここは少し応用的ですが、舞菜と紗由から連鎖してメンバーとなったことを反映しているといったあたりでしょうか。

 

※12/02追記

かえについての思索が甘いと思ったので、補遺という形で掘り下げました。良ければこちらの記事もどうぞ。

 

ここぱんなに香澄の声が使われているというのは確かにありますが、そこにもちゃんと配慮がされています。実は香澄とミライkeyノートという曲が直接交わる地点は設けられておらず、徹底的にここぱんなと一対一で向かい合うような描写になっているんですよね。私の覚えている限りでは、ですが。

 

 

『ミライkeyノート』を本城香澄が歌うということ

さてお待たせしました、章題のようにようやく本題に入ります。もちろん香澄が過去を乗り越えた証の一つとして捉えられますが、それは色々な方が触れられているので別の切り口にてです。

 

私たちの世界においてVOCALOIDと中の人の距離は様々ですが、一般的に両者はある程度距離を置く形になっているんですよね。あくまでボカロはボカロ、中の人は中の人という形で。それゆえ、中の人がカバーするというのは滅多にありません。

※11/28ミクさんの項を追記、ウナちゃんの部分も一部変更

これの一番良い例はやはり初音ミク藤田咲さんでしょうか。片方はクロスフェードになりますが、同じ曲を歌っているのに明らかに声が違うことがわかるかと思います。

またその次にクリプトンフューチャーメディアから出た鏡音リン・レンも、下田麻美さんの声からある程度ズラしてきています。

リンリンシグナル (feat. 鏡音リン・レン)

リンリンシグナル (feat. 鏡音リン・レン)

  • シグナルP
  • ポップ
  • ¥153

こうした先駆者がいたために、前述のような風土ができたのかもしれません。リステ世界ではここぱんなの中の人は非公表ということですし、もしかしたらより強くこの傾向はあるかもしれません。そうなるとそもそもカバーする機会が本来ならないはずですし。

 

リステ声優さんの中では、田中あいみさんがVOCALOID音街ウナの声を担当されています。こちらはボイスマテリアルという形で掛け声などの音声素材も同梱されるため、声優さんに割と寄せているという最近増えてきたタイプですね。以下の動画をはじめとしたサイゼPの曲を聴いていただければなんとなくボイスマテリアルがどういうものかわかるかと。

最近では寝息や寝言のボイスマテリアルにインストをつけた曲なんてのも出ており、活用方法は非常に様々です。

そしてニコニコ動画にウナオリジナル曲のタグを付けて投稿されている動画は、この記事を書いている時点で約1500件*2あります。もちろんそれ以外の場所でも曲は発表されているでしょう。

しかし、田中あいみさんがその曲をカバーしたことがあるのは、2周年記念アルバムの際のたった一度、それも一曲だけなのです。

どぅーまいべすと!

どぅーまいべすと!

  • キノシタ
  • J-Pop
  • ¥255

 

だから希少なんですと締めるつもりだったのですが、香澄とここぱんなの場合さらに一段階あることに気づいたので続けます。

ここぱんなの声の担当者は非公表で、舞菜がたまたま気づけたのもその精度の高い耳があってこそでした。そのような状況でも、香澄がミライkeyノートを正式にライブでカバーしたとなると、舞菜以外にも気づく人は出てきてしまうでしょう。

そうなるとやはり、分かってもらうことを前提に歌ったということになるのではないでしょうか。自分と同じ声をしたモノとともに夢を追い続けることを改めて宣誓するように。

 

いやそれにしてもあっちの世界で突然この曲投げつけられた香澄推しがどんな風に叫んだのか気になりません?絶対崩れ落ちて死んでるでしょ。

 

 

終わりに

Re:ステージ!の香澄を通じたVOCALOIDへのこの眼差し方は、直接用いないコンテンツからこそできるアプローチで特徴的ですよね。私にとってもこうした形でVOCALOIDを見つめ直すいい機会になりました。

サムネに使ったように、かえがボイスノイドについて解説するとき胸熱の言葉を使っているんですよね。しかもあのカキコと同じ文脈で。*3これだけでも、VOCALOIDというものにアイドルコンテンツでしっかり向き合うというリステの覚悟が私には伝わりました。それに応えたいというのもこの記事を書いた動機のひとつにあります。

 

Re:ステージ!というコンテンツの中でも、特にオルタンシアにはヒゲドライバーさんをはじめとして様々なボカロPが曲を提供しているというのも面白いですよね。

そして何より、香澄の相方であるかえのソロ曲『ガジェットはプリンセス』が、ボカロの特性を活用した曲で名を上げたsasakure.UKさんによるものというのはもっと特筆されるべきだと思います。別の記事として書くかもしれませんし忘れてしまうかもしれませんが。

※12/02追記

というわけで書きました。読んでください

 

こういう信頼とともにリメンバーズとしてこれからを見届けていけたらと思いましたね、あのミライkeyノートを聴いたからには。

 

 

長くまたとりとめない感じになりましたが、ご静聴ありがとうございました。